英語がいつまでも話せないのは、あなたのせいじゃない。TOEIC640点のPMが10年かけて気づいた、英語との向き合い方

キャリア・英語
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文法書を買った。リスニング教材も買った。オンライン英会話にも登録した。でも全部3日坊主で終わった。そういう経験が私にもある。

Matt CuttsのTEDトークのような短い動画を1ヶ月ひたすら見て、スクリプトも全部覚えた。様々な国の講師とオンライン英会話もやった。週一回の英語スクールにも通った。

でもそれができたからといって、英語スキルは向上しなかった。

私はTOEIC640点、海外経験ゼロのまま外資系医療機器メーカーのPMとして10年生き残ってきた。英語が得意になったわけではない。英語との向き合い方が変わっただけ。

この記事では、なぜ英語の勉強が続かないのか、そして何から始めればいいのかを、自分の体験をもとに書いてみたい。

なぜ英語の勉強を続けても話せないのか

ネット上で初心者向けの英語学習法として良く見るものを一度整理してみよう。

聞き取りに重要だと言われるディクテーション。題材に上がるTEDは、内容が整理されていて、字幕もある。私はTEDが登場したころから好きで良く見ていたし、TEDxにも参加したことがある。

話題も豊富で好きなテーマが選べる。でもあれは整理された講演であって、実際の会話ではない。スピードも会話とは違う。

オンライン英会話は相手がいて話す練習になる気がするが、実務の文脈と全く違う。英語の映画は長すぎて仕事と育児の合間に続けられるものではない。英語スクールに週一回通っても、実務との接続がない。

全部「英語に触れている気になれるコンテンツ」である。実際に使う訓練とは別物だ。

英語学習業界は「英語が上手くなること」を売っている。でも実際に必要なのは、日本語を話さない人たちと仕事を前に進める能力だ。

その目的のズレが、続かない本当の理由だと思っている。

勉強する時間があると思っている時点で、本番に入っていない

外資系に移った直後、英語を勉強する時間はなかった。会議は来る、メールは来る、締め切りは来る。仕事を止めて英語学習の時間を与えてもらえる環境ではない。

失敗しながらでも短期間で適応しろというのが外資系の現実だ。

私の場合、数ヶ月の米国本社滞在の機会を得た。日本人上司は不在、本社のマーケティング部門やステークホルダーに囲まれた環境だった。何をするかは自分次第。

やったのはシンプルなことだった。関係する部門、メールで会話したことがある相手、今後コミュニケーションが必要な人にひと通り挨拶して、課題を共有する時間を取りたいとミーティングを設定した。

英語が完璧でなくても、やることは明確だった。挨拶、関係構築、課題の共有。英語力の問題ではなく、仕事の進め方の問題だった。

40代で仕事と育児を抱えながら単語帳をめくる動機は続かない。それは意志の問題ではなく、構造の問題である。

あなたは何のために英語を使うのか

ここで一度立ち止まって考えてみてほしい。

通訳になりたいわけではない。大学の授業を英語で受けるわけでもない。国際会議で国を代表するわけでも、外資系の重役になるわけでもない。

日本語を話さない同僚や顧客と、ネットワーキングができて、ビジネスコミュニケーションのスキルを持って、自分の意見を伝えられること。まずはそれが目標である。

その目的に対して、今やっている勉強は本当に合っているか。

日本で生活している限り、英語を強制的に使う場がない。英語で考えるとは日本語をただ変換するのではなく、思考のプロセスを新たに構築する作業である。

その構築には、日本語に逃げられないイマージョン環境が必要なのだ。その場を自分で作れないのに「場を作れ」と言っても無理がある。

だから理想を捨てることから始める。一言一句聞き取ろうとしない、字幕なしで映画を理解しようとしない、TOEICなどの試験対策を優先しない。

まず英語が日本語と根本的に違う処理をするものだという感覚を掴むことにフォーカスする。そして相手との双方向のコミュニケーションツールであると定義し直す。

英語の感覚を掴むとはどういうことか

英語は日本語のように一言一句聞き取って理解する言語ではない。話者によっても癖があり、インド人、中国人、ヨーロッパ人、それぞれのアクセントや表現がある。ネイティブの英語が世界標準ではない

もう一つ重要なのは発話量。日本語は文脈で補えるため「あれ、どうなった?」で通じる。でも英語は文脈が共有されていないから、全部言葉にしないと伝わらない。日本語の感覚で話していると、圧倒的に発話量が足りない。

特に初心者は言いたいことが伝わらなければ、別の表現で何度でも伝えようとする粘りが必要。更にタイミングと瞬発力。会議で発言のタイミングを掴む力、相手の話に即座に反応する力。これは勉強では身につかない。使いながら掴むしかないものだ。

確かに、一言一句聞き取れるに越したことはないし、それが必要な仕事もある。でも多くのビジネスの場では、ある程度わかれば仕事は回るし、聞き取れなければ確認する。

最初から完璧を目指すから続かない。

文法は使いながら直していくもの

「文法を完璧にしてから使い始める」という発想は捨てた方がいい。文法が大事ではないと言いたいのではない。大事だからこそ、使いながら直していく姿勢が必要である。

学生時代のように文法を整理して単語を覚えてテストのスコアを上げて、という手順を踏む時間はない。間違えた英語を使うことより、何も言えないまま黙っていることの方が、ビジネスではるかに大きなリスクだ。

汎用的な文法書はスマホに入れておいてもいいだろう。日常で出会った英文構造が分からなかったり、表現したい言葉が正しいかチェックできるように。

私は”English grammer in use Intermediate Student’s Book”をいつも持ち歩いている。

業務の文脈で英語を使い始める

では何から始めるか。私がやったのは自己紹介文を作ることだった。

まだAIもなかった時代、YouTubeで日本人や外国人が自己紹介しているのを真似した。例えば文を作る。

I’ve been working for a medical device manufacturer as a mechanical engineer for 10 years.

この一文を作る過程で、現在完了形が自然に頭に入る。企業で務める会社員がworking forを使う理由も、文脈の中で気づく。文法書で学ぶより先に、使う文脈があるから記憶に残る。

英語を「外国語の勉強」として捉えるのをやめて、「業務の範囲を広げるツール」として使い始めた時に、初めて何かが変わった。

まず自分の仕事や自分の個性を英語で説明する一文を作ることから始めてほしい。その過程で、文法は自然に入ってくる。

完璧でなくていい、作ったら実際の相手に向けて使ってみる。英語スクールのロールプレイではなく、実際の仕事相手や知人に向けて使う。

英語の勉強をやめて、使い始めることから

あなたが英語を話せないのは、あなたのせいではない。昔習った学校での授業や英語学習業界が売っているものと、実際に必要なものがずれているだけだ。

通訳者や外交官になるわけでもない。日本語を話さない人たちと仕事を前に進められればいい。その目的に対して、完璧を目指す必要はない。

TEDを見ても、オンライン英会話を続けても、スクールに通っても上達しなかったのは、使う必然性がない環境で触れているだけだったからだ。

文法を完璧にしてから使い始めるのではなく、使いながら直していく。発話量を増やして、言い方を変えて、何度でも伝えようとする。その繰り返しの中でしか英語の感覚は掴めない

まず自分の業務を英語で説明する一文を作ることから始めてほしい。使いながら間違いに気づいて直していく。その繰り返しの中で徐々に上達すれば自信もつくし、より高度なコミュニケーションの仕事も見えてくる。