外資系の会議で、自分の存在が消えていく感覚を味わったことはありますか。
英語が通じないことより、もっと恐ろしいことがあります。沈黙によって、担当者であるはずの自分が会議の中に存在していないかのように扱われることです。
私はプロダクトマネージャーとして働き始めた当初、英語初心者のまま本社との会議に放り込まれ、何度も頭が真っ白になりました。
ため息をつかれ、目線を外され、質問が隣の上司に飛んでいく——その屈辱を何度も経験しています。
この記事では、私が実際に味わった体験と、そこから這い上がるために変えたことを書きます。決して英語力だけを意識したのではありません。
外資系の英語会議で本当に怖いこと
英語が話せないことより、もっと恐ろしいことは「この人に聞いても意味がない」と判断されることです。
あるレビュー会議で、私が説明をしたにもかかわらず、質疑応答ではアメリカ人の参加者は私ではなく隣の日本人上司に向かって質問を投げ続けました。
担当者である私に来るべき質問が、すべて上司に飛んでいく。
「あなたには聞く価値がない」と突きつけられた感覚でした。
上司が本当に困っていること
ここで視点を変えてみてください。会議で黙り続けるということは、上司から見ると「仕事が進んでいるかどうかわからない部下」になるということです。
グローバル企業の上層部は、日本人メンバーにネイティブと同じ英語力を期待していません。
言語の壁があることは、採用した時点でわかっています。彼らが本当に困っているのは英語力ではなく、この人間が今何をしているかが見えないことです。
完璧な英語で話せるようになるまで黙って待つという選択が、実は一番リスクが高い理由はここにあります。
英語より先に考えたこと——この会議の目的と、自分の役割
彼らがいらついていたのは、私の英語が下手だからではなく、欲しい情報が返ってこないことでした。
ただ、私の側に情報や経験が足りなかったわけではありません。質問が聞き取れない、どう言葉にすればいいかわからない、その二つが重なって何も返せなかっただけです。
そこで変えたのは会議前の準備です。この会議は何を決める場で、自分はそこで何を求められているのか。
目的と自分の役割を事前に把握しておくと、準備の範囲が絞れます。全部に備えようとしなくていい。そのテーマに集中して準備しておけば、たどたどしい英語でも何を返すべきかがわかります。
それでも当日、質問が聞き取れないことはよくあります。そのときに必要なのは語彙でも文法でもありません。
英語初心者であっても堂々と聞き返せるか。自分が知っている表現を何度も組み替えながら、伝わるまで諦めずに返せるか。主にその二つです。
そして堂々と聞き返せるのは、自分がその仕事の専門家としてその場にいるからです。
ここで言う専門家とは、博士号を持っているとか資格があるという話ではありません。
私は医療機器の開発エンジニアとして技術開発を担っていた頃、目的や研究のメリット、方法、データの解析結果を説明する立場にありました。プロダクトマネージャーに異動してからは、顧客のVOC調査や市場分析のデータと洞察を持っているのは自分でした。
その仕事を実際にやってきた人間が、その場にいる参加者の中でその領域の一番の専門家なのです。
もちろん、最初からそう割り切れたわけではありません。もじもじするな、聴衆ではなく画面ばかり見るな、声が小さくて聞こえない——長い間そう言われ続けてきました。
それでも恥をかけば、次はもっとこうしようという反省点が必ず出てきます。思ったように口が開かなかった、伝わらなかった、そういう具体的な失敗があるから直すべき点がわかる。
テスト勉強に時間を費やすより実践の方が大事だと私が主張する、最大の理由がここにあります。
英語の質問が聞き取れないときの3つの対処法
とはいえ、実際にどう聞き返すかで迷う人は多いと思います。私がやっていたのは三つです。
まず聞き返す。「Could you say that again?」と一度聞き返すだけで、相手はゆっくり話し直してくれることが多い。これは恥ずかしいことではありません。
次にキーワードだけ拾う。全部聞き取れなくていい。「budget」「timeline」「customer」など、質問の中の単語を一つ拾えれば、何について聞かれているかの見当がつきます。
それでも確信が持てないときは確認してから答える。「Are you asking about〜?」と相手の質問を自分の言葉で確認してから答える。的外れな回答を防げます。
それでも答えられないと判断したものだけ「確認して後で返します(I’ll confirm and get back to you.)」と宣言する。
全部に使うのではなく、最後の手段として使うものです。そして宣言したら当日中に必ず返す。内容が短くても、宣言を守ったという事実が信頼を作ります。
会議での具体的な立ち回り方は、英語力が低いPMが議論をまとめるサンドイッチ・ファシリテーション術に書いています。
質問が自分に飛んでくるようになった理由
戦い方を変えてから少しずつ変化がありました。
英語はそれほど上達していません。でも「この人に聞けば情報が返ってくる」という信頼ができていました。
信頼は流暢さではなく、相手が求めているものを返し続けることで積み上がります。
今、英語に苦しんでいる人にこう伝えています。「失敗するなら、期待値の低いうちにやっておいた方がいい」と。
私が当時の失敗を許されたのは、まだ若く、管理職ではなかったからです。もし管理職になってから初めてこの沈黙の恐怖に直面していたら、信頼回復はずっと難しかったはずです。
外資の現場で生き残るために必要なのは、TOEICの高得点ではありません。参考書を開く時間があるなら、その時間を実戦に使ってください。
恥をかいて、汗をかいて、失敗した数だけ直すべき点が見えてきます。その繰り返しだけが、会議室での信頼を作ります。



