前回の記事で「準備(台本)が大事だ」とお伝えしましたが、一つ残酷な現実を付け加えなければなりません。
それはどんなに完璧な台本を作っても、議論はよく脱線するということです。
想定外の反論、止まらない議論、謎の沈黙。 私たち英語弱者にとって、このカオスは本当に恐ろしいものです。
しかし、心配しないでください。最初からネイティブのように流暢に捌くなんて誰にもできません。
重要なのは、中身の議論がどれだけグダグダになっても「入り口(目的)」と「出口(次のアクション)」だけは死守することです。
今回は私が実践している、議論を「最初と最後」で挟み込んで成立させるサンドイッチ・ファシリテーションの技術を共有します。
議論は制御不能。「最初」と「最後」だけを押さえる
ネイティブ同士がヒートアップした議論に、英語力の低い私たちが割って入って、論理的に打ち負かすのは不可能です。そこを目指すと心が折れてしまいます。
だから、発想を変えましょう。 「中身(プロセス)」はカオスでもいい。しかし、「最初(目的)」と「最後(結論)」だけは絶対に自分が握る。
サンドイッチの具(議論)がどんなに散らばっても、パン(最初と最後)で挟んでしまえば、それは一つの「成果物」になります。これがPMの生存戦略です。
Top Bun(入り口):開始1分でゴールの旗を立てる
会議が迷走する最大の原因は、英語力不足ではなく「何を決める会議か」が曖昧なことにあります。 最初にここだけは、暗記したフレーズではっきりと宣言してしまいましょう。
- 今日のゴール設定:
- “The goal of this meeting is to decide A or B.” (今日のゴールは、AかBかを決めることです)
- 時間配分:
- “We have 30 minutes. Let’s spend the last 5 minutes on next steps.” (30分あります。最後の5分は次のアクションの確認に使います)
これを言うだけで、参加者の頭に「枠」ができます。もし脱線しかけても「それは今日のゴールから離れてしまいますよね?」と言いやすくなります。
Meat(中身):流暢さは不要。「確認」と「進行」の信号機になる
さあ、議論が始まりました。予想通りカオスになります。 ここで無理に気の利いた意見を言う必要はありません。PMの役割は「交通整理」です。使えるのは以下の2つのフレーズだけです。
① 青信号:理解を確認して進める
議論が早すぎて置いていかれそうになったら、勇気を出して止めます。 「分からない」と言うのではなく、「確認させてくれ」と言えばプロフェッショナルに見えます。
- 要約と確認(重要):
- “Let me double check. So, your point is [Simple English]… Is that correct?” (確認させて。つまり、あなたの言いたい点は …ということだね。合ってる?)
② 黄色信号:時間を理由に次へ移る
話が長引いたり、別の話題にズレたりした時は「時計(Time)」を悪者にします。
- 強制進行:
- “In the interest of time, let’s move to the next topic.” (時間の関係上、次の話題に移りましょう)
Survival Tip:黙ったら終わり。「スタートダッシュ」で上司を味方につける
サンドイッチが崩れそうな時、それを支える最強の「串(ピック)」となるのが、同僚ではなく「外国人上司」です。
多くの人は「英語ができるようになってから発言しよう」と考え、最初の数ヶ月を沈黙して過ごしてしまいがちです。 しかし、これは外資系では非常に危険な行為です。
「新人カード」には使用期限がある
上司は、あなたの英語力が完璧でないことを知った上で採用しています。 着任直後の今は、いわば「トレーニング期間」です。この期間だけは、上司はあなたを助けることを「自分の仕事」だと思ってくれます。
- 沈黙のリスク:
- 怖がって黙っている期間が長いほど、「この人は何もしていない」とみなされ、同僚からの評価も、上司からの期待値も下がっていきます。
- スタートダッシュの価値:
- 英語が下手でも、必死に上司を巻き込み、会議に呼び、助け舟を出してもらいながら仕事を前に進める。その姿勢こそが「責任感がある」という評価に繋がります。
使える「カレンダーハック」
私は重要な会議には、わざと「上司の空き時間」を狙って招待状を送ります。そして事前にこう伝えておきます。
“I set up a meeting with the team. It might be tough for me to facilitate, so I’d appreciate it if you could join and back me up.” (会議を設定しましたが、ファシリテーションに苦戦するかもしれません。入ってサポートしてもらえると助かります)
仕事の中身を知っている上司が後ろにいれば、議論が迷走しても最短距離でフォローしてくれます。 上司を使える時間は無限ではありません。評価が定まってしまう前の「今」だからこそ、使える手です。
Bottom Bun(出口):ここさえ決まれば「勝ち」。Next Actionを握る
終了5分前になったら、強引にでも議論を打ち切ってください。そして「誰が、いつまでに、何をするか」を確認します。ここさえ決まれば、その会議は成功です。
- ラップアップ(まとめ):
- “Okay, let’s wrap up. We decided to go with Plan A.” (よし、まとめよう。プランAで行くことに決まったね)
- アクション確認(最重要):
- “So, Smith, you will send the data by Friday. Correct?” (スミスさん、あなたが金曜までにデータを送るんだね。合ってる?)
この確認が取れれば、最低限の責任は果たせました。堂々と会議室を出ましょう。
結論:これは「初期装備」。早くそこから卒業しよう
最後に一つだけ、お伝えしておきたいことがあります。
このサンドイッチ術は、あくまで英語力が十分でないPMが生き残るための「初期装備」に過ぎません。
本当のハイレベルなPMになれば、複雑なワークショップや、数日間にわたる議論のプロセスそのものを設計し、リードする姿勢が求められます。
しかし、最初からそれを任されることは稀でしょう。会社もあなたの現在の英語力を見越してアサインしているからです。
だからこそ、このサンドイッチ術で稼いだ時間を使って猛スピードで成長してください。 上司という串がいらなくなり、中身の議論を自在に操れるようになった時、あなたはもう「生存戦略」なんて考える必要のない、本物のグローバルPMになっているはずです。
それまでは、泥臭くても構いません。パンで挟み続けてください。 生き残ることさえできれば、成長のチャンスは無限にありますから。
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