「英語力」ではなく「生存能力」を磨こう。TOEIC 640点の元エンジニアが外資系PMとして生き残るために構築した「実務サバイバル術」

Global Career & English
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ある朝、目が覚めるとTeamsに「Congrats!(おめでとう!)」の文字が並んでいました。

メールを確認してみたら、グローバルマーケティングチームでの2025年表彰。プロジェクト内で自分の専門性や役割を果たす姿勢、深夜や早朝のミーティングやワークショップへの積極参加、データや事実を基にした分析結果の提示など、今年の行動がチームから評価された瞬間です。

しかし、その画面を見ている私は、寝癖がついたまま娘を車に乗せ、プリスクールへ送るためにアクセルを踏んでいる「疲れた日本のパパ」でした。

数年前まで、私は英語の会議で一言も発せられず、参加しているのに空気のように扱われるという状況に耐えていました。 新卒で入った職場は、英語を使わないJTCの製品開発部門。TOEICは640点で留学どころか海外旅行も未経験。

そんな私が、なぜネイティブだらけの外資系医療機器メーカーのPMとして生き残り、表彰されるまでになったのか?

英語力が劇的に上がったわけではありません。今でも聞き取れないジョークは愛想笑いで流します。

変えたのは「英語力」ではなく「戦い方(生存戦略)」です。

この記事は、英語講師が教えるような正しい学習法ではありません。 英語が苦手なPMが、テクノロジー(AI)と思考、そして泥臭い現場の工夫を駆使して構築した、「外資系企業で生き残るための実務サバイバルガイド」です。

もし「真面目に勉強しているのに会議で話せない」「忙しくて机に向かう時間がない」と悩んでいるなら、この記事がその閉塞感を打破する設計図になるはずです。

具体的には、外資系で働きたいが英語力に自信がない人や、TOEICの点数が伸び悩みキャリアに不安を感じている人に向けて、英語力に頼らず成果を出すための実践的な戦略をまとめたものです。


外資系で「英語ができない」本当の理由:TOEICと現場のズレ

「もっと単語を覚えれば」「もっと文法が完璧になれば」英語が話せると思っていませんか?

しかし、断言します。そのアプローチでは外資系の会議で永遠に発言できません。なぜなら、現場で発生しているのは「スペック(英語力)不足」ではなく「OS(マインドセット)」の不適合だからです。

TOEIC高得点でも「会議で沈黙」なら評価はゼロ

例えば、バグのない完璧なコードを書こうとして、いつまでもリリースしない開発者をどう思いますか? ビジネスの現場では、実際に動かない機能に価値はありません。

英語も同じです。 文法的に正しい英語(=完璧なコード)を頭の中で組み立てている間に、会議の話題は次に移ります。結果は「沈黙」。

日本では「静かに話を聞くこと」は美徳とされますが、外資系において沈黙は「自分の役割をはたさない、貢献ゼロ(=いないのと同じ)」とみなされます。

一方、ネイティブではない同僚たちは、文法が正しくなくでも、単語だけの羅列でも、会話に参加してきます。 現場の評価指標は「正確さ」が最優先ではありません。

「内容」と「レスポンス速度」、「伝えようとする姿勢」が重要です。ここに気づかない限り、どれだけTOEICの点数を上げても現場では無力です。

「正解主義」というOSのバグを修正する

ハーバードやMITなど海外の大学のアドミッション・ポリシー(入学基準)を見ると、彼らが重視しているのは「Risk-taking(リスクテイク)」の精神です。つまり、不確実な状況下であえてリスクを取って発言し、行動する姿勢こそが評価されます。

しかし、日本の教育は、小さい頃から私たちに「正解主義OS」をインストールしてきました。「テストで高得点を取れ」「みんなと同じように行動しろ」。この古いOSが、不確実性の塊であるビジネス英会話の現場でエラーを起こし、私たちをフリーズさせているのです。

英語学習者に必要なのは、英語力の向上(アプリケーションの追加)ではなく、まずOS自体の書き換えです。「間違った英語を話す」ことは恥ではありません。

沈黙して自分の責任を積極的に果たそうとしない姿勢こそが、チームの一員として問題なのです。


英語力不足をカバーする3つの実務生存戦略

では、英語力が弱い状態からどうやって戦うのか。

私が実践してきたのは、自分の弱点をツールと戦略で補完するアプローチです。

会議を制する2ステップ:割り込み→すり合わせ

私が会議で生き残るために意識しているのは、流暢な英語ではありません。

リスニングに限界を感じた瞬間、反射的に繰り出すこの2つの手順だけです。

Step 1:割り込み(Interruption) “Sorry, I couldn’t catch what you said.” (すみません、聞き取れませんでした)

まずは、どんなに拙い英語でもいいから、物理的に会話の流れを止めます。

「I couldn’t catch…」と言いかけ、必要なら「…what you said」と継ぎ足す。文法よりも、「今のまま進めさせない」という意思表示が先です。

Step 2:すり合わせ(Alignment) “Does it mean that …?” (それって、つまり〇〇ということですか?)

ここが重要なポイントです。

単に「もう一度言って」と頼むと、相手は同じスピードで繰り返すだけで地獄には変わりありません。 しかし「Does it mean that…」と自分の理解はこうですと投げることで、土俵が変わります。

英語の試験(Listening)から会話のすり合わせ(Logic)へと戦いのルールを書き換えるのです。

たとえ英語が聞き取れていなくても、内容が合っていれば”Yes!”と言われますし、聞き取れていないことが分かれば”No, actually…”と、相手は表現を変えて簡単な英語で言い直してくれます。

この「2ステップ」さえ身体に染み込ませれば、TOEICの点数が低くても、外資系の会議で「仕事ができる奴」として生き残れます。

実際に私が英語力ゼロでどう現場を乗り切ったか、その泥臭い実体験は以下の記事にまとめています。

AI(ChatGPT/Copilotなど)を装備する

語彙力や他の力が足りないなら、自分の脳だけで戦うべきではありません。AIという強力なサポートツールを常に装備してください。

私は会議の前に、必ずChatGPTと「壁打ち」をします。 例えば、言いたいことを箇条書きで入力し、以下のようなプロンプトを投げます。

「私は医療機器メーカーのPMです。以下の内容を英語にしてください。想定される反論も3つ挙げてください」

これで、会議中に想定外の質問が来てもパニックにならずに済みます。 メールも同様です。

日本人的な英語をAIに投げ、「プロフェッショナルで、かつ親しみのあるトーンにリライトして」と指示するだけで、ふさわしい英語になります。

これを繰り返し実行すれば自分が良く使う英語フレーズが分かり、次第に定着していきます。

▼【あわせて読みたい】PMが実際に使っているプロンプトはこちら

腹式呼吸と低音で「自信」を演じる

かつて私は、海外の展示会で自分の声がかき消され、相手にされない屈辱を味わいました。

そこで気づいたのは、英語は言語である以前に「音」だということです。

日本人は口先だけでボソボソと喋りがちですが、英語は「腹式呼吸」で腹から声を出す方が通じます。 私は発音の練習以上に「低めのトーンで、大きな声で話す」トレーニングをしました。これだけで、相手の反応が変わると実感します。

内向的な性格を変える必要はありません。会議という舞台の上で役を演じるのです。


社会人の英語勉強法:「机に向かわない」

「そうは言っても勉強する時間がない」というのは理解できます。

私も2児の父であり、保育園の送迎と家事の合間に仕事をしています。 だからこそ「机に向かって勉強する時間」は捨てました。

「勉強時間」は作らず「隙間時間」に割り込ませる

英語学習はメインのプロセスではなく、生活の隙間に入り込む「割り込み処理(Interrupt)」として設計します。

  • 子供の習い事を待っている車内
  • 通勤中
  • 皿洗いや洗濯物を畳んでいる時間

これら「耳だけ空いている時間」を英語に投資します。

そのためには、高音質なイヤホンやスピーカーと、スマホの学習アプリのインストールが重要です。

実践した「1週間スプリント」学習メニュー

私が実践して効果を感じた、無料かつ最強のルーティンは以下の組み合わせです。

  1. Input(文脈理解): HBR Ideacast
    • ハーバード・ビジネス・レビューのポッドキャスト。ビジネスの「文脈」と「単語」をセットでインプットします。
  2. Input(基礎補修): BBC Learning English
    • 6分間の番組で、文法のバグを修正します。
  3. Output(リハーサル): ChatGPTとの独り言
    • 学んだ表現を使って、AI相手にひたすら話しかけます。心理的安全性が担保された、最高のアウトプットの場です。

まとめ:英語は「学習」ではなく「仕事のツール」

私がTOEIC 640点のまま外資系で生き残れたのは、英語を教科書で学ぶのをやめ、現場で使い倒すツールだと割り切ったからです。

もちろん、今でも冷や汗をかくことはあります。

会議で言葉に詰まり、言いたいことが言えず悔しい思いをすることもあります。 しかし、その恥をかいた数だけ、英語は実践的な武器になっていきました

あの朝、チャットでもらった「Congrats!」は、英語力への賞賛ではありません。 拙い英語でも、自分の役割を果たそうとした姿勢への賞賛だったのだと思います。

あなたも、TOEICの参考書を置いて、まずはAI相手に拙い英語を話してみませんか? その小さなアウトプットが、サバイバルへの第一歩になります。