外資系の会議で、発言できないまま終わったことはありますか。
準備して臨んだのに英語が聞き取れない。何か言おうとしている間に話題が先へ進んでしまう。会議が終わっても何も手応えがないまま、また次の会議が来る。
私はその状態が何年も続きました。TOEIC640点、海外経験ゼロのまま外資系医療機器メーカーに転籍し、英語の会議に放り込まれた元エンジニアです。
自己紹介すらまともに伝わっているかわからない時期がありましたし、担当者である自分を飛び越えて隣の上司に質問が飛ぶという屈辱も経験しました。
それでも10年間、外資系PMとして生き残り続けています。先日は本国のグローバルマーケティングチームから表彰もされました。英語力が劇的に上がったからではありません。戦い方を変えたからです。
この記事では、英語に苦しみながら外資系で生き残ってきた経験をもとに、TOEICや文法書では解決しない「会議でついていけない」問題の本質と、今すぐ変えられることを書いています。
自己紹介すらまともにできなかった
外資系に転籍した最初の頃、私はオンライン会議で自己紹介をしました。一生懸命準備した言葉を並べたのに、相手の反応は無でした。愛想笑いすらない。「伝わったのか、伝わっていないのか」すらわからず、ただ手応えのない時間が過ぎていきました。
会議の英語は当然ほとんど聞き取れませんでした。断片はなんとなく耳に入るようになっても、チームの会話の流れにはまったくついていけない。発言できないまま会議が終わり、何も残らないまままた次の会議が来る、その繰り返しでした。
本社で開かれたチームミーティングに参加したときも同じでした。スモールグループに分かれてのワークショップでは、英語での議論についていけず、ほぼ無言のまま終わってしまいます。
せっかく現地まで来たのに相手との距離は縮まらないまま、がっかりして日本に帰ってくる。米国や欧州の展示会で製品説明をしていても、顧客の目がきょとんとする様子を見て、そのたびに自信が削られていきます。
そのたびに本屋に行った
手応えがないと、人は何かに頼りたくなります。私は何度も本屋に行きました。新しい文法書を買い、英語学習の動画を探し、ポッドキャストをスマホに入れてみる。でもどれも続きませんでした。
日本で仕事をしていれば日本語がメインになりますし、上司がフォローしてくれる環境では、英語を使う機会やプレッシャーが薄れていくのは当然です。
そしてまた次の会議で黙り、反省してはまた新しい取り組みを始める。このループを何年も繰り返しました。
追い打ちをかけたのが、年末の評価です。外資系では本国の上司も評価に加わります。毎回のフィードバックで言われることは決まっていて「もっと意見を出せ」「会議で黙っているな」の一点張りです。
正しい指摘なのはわかっている。でも、どうすればいいのかは誰も教えてくれませんでした。
英語力よりもっとつらかったこと
聞き取れないこと自体より、もっとつらい経験もありました。
ある会議で私が説明をしたのに、その後の質疑応答では参加者が私ではなく隣の上司に向かって質問を投げ続ける場面がありました。私が担当者なのに、です。
「あなたに聞いても仕方ない」と言われているようで、この経験が余計に気を重くしました。
恥をかきたくない、またきょとんとされたくない、そう思えば思うほど発言できなくなっていき、発言できないからまた評価が上がらないという悪循環でした。
上司を見て気づいたこと
ある時、日本人の上司が外国人と話しているのを観察していました。流暢ではなく、文法も怪しいところがある。それでも相手に確実に伝わっていて、信頼もされています。
その姿を見ていてふと思ったのです。英語力じゃないんだ、と。上司が持っていたのは、長年の経験から来る仕事への深い理解と、相手が何を必要としているかを察する力でした。
英語はその中身を届けるための手段にすぎない。手段が多少不完全でも、中身を伝えようとする努力が重要。そのことに気づいてから、自分の中で何かがゆっくりと変わりはじめました。
変わったのは「覚悟」だった
今の私は、米国の上司から英語力の指摘をされなくなりました。会議でも発信できています。何かが劇的に上達したわけではなく、変わったのはマインドです。
思うように伝わらなくてもいい、伝わらなかったら別の言い方でもう一度やればいい、会議が終わってからフォローすればいい——それよりも、私という人間が何者で、どんな情報を持って、どんな役割を担っているかを相手に認識させることの方がはるかに大事だと思えるようになった瞬間から、怖さがなくなりました。
完璧な英語を目指すより先に、この覚悟が必要でした。
上司が本当に困っていること
ここで少し視点を変えてみてください。
英語の会議で黙り続けるということは、上司から見ると「仕事が進んでいるかどうかわからない部下」になるということです。進捗が見えない、困っていることが上がってこない、何を考えているかわからない。
これは外資系に限らず、日本の会社でも同じことです。上司が部下に対して感じる不安の正体は、英語力ではなく可視性の欠如です。
グローバル企業の上層部は、たいていの場合日本人メンバーに対してネイティブと同じ英語力を期待していません。言語の壁があることは採用した時点でわかっています。
むしろ彼らが求めているのは、多少伝わりにくくても伝えようとする姿勢です。言語の問題も含めてマネジメントするのが自分たちの責任だとグローバル企業のリーダーは理解しています。
だから、完璧な英語で話せるようになるまで黙ってしまうという選択が、実は一番問題なのです。
TOEICの参考書を買う前に考えてほしいこと
「英語力をもっと上げなければ」と思って参考書を探しているなら、少し立ち止まってください。私が何年もかけて気づいたのは、問題は英語力ではなく戦い方だということです。
会議で発言できない本当の理由は、英語が下手だからではありません。「完璧な英文を作ってから話さなければ」という思い込みと「失敗したくない」という恐怖がその正体です。この2つが沈黙を作っています。
そして、沈黙している限り英語は永遠に伸びません。今の自分の英語でまず一歩踏み出すこと。そこからしか始まらないのです。
具体的に私がやっていること
声を出すことを最優先にする
完璧な文章でなくていい。「I think…」「Actually…」、何でもいいので発言権を取ることから始めます。準備をして背景を理解していれば、内容は後からついてくるし、言い足りなければ会議の後にフォローすれば十分です。
会議そのものをどう仕切るかについては、英語力が低いPMがカオスな議論を生き延びる方法で詳しく書いています。
会議の内容はAIに要約させる
今の私が一番有効に使っているのが、Copilotです。
Teams会議で自動生成されるスクリプトをCopilotで要約すれば、英語が完全に聞き取れなくても会議の内容を後で確認できます。
「あの議論で何が決まったのか」「自分のアクションは何か」が会議終了直後にわかる。聞き取れなかったことへの焦りより、内容を正確に把握して次に動く方がはるかに大事です。
その場でわからなければ「後で返す」と宣言する
「確認して後で返します(I’ll confirm and get back to you.)」は逃げではありません。黙って固まるより、相手への誠実な対応として受け取られます。
なぜ英語力より仕事の中身が評価を左右するのかは、業務解像度が英語力を補う理由で詳しく書いています。
英語より先に「相手が何を聞きたいか」を考える
上の立場の人が聞きたいのは結論や方向性、エンジニアが聞きたいのは根拠や条件です。それさえ頭に入っていれば、中学レベルの英語でも会話は成立します。
屈辱的な体験からどう這い上がったかの具体的なプロセスは、「君には聞いてない」と無視されたPMの生存ルールに書いています。
外資系で英語に苦しんでいる方へ
あなたが今感じている「手応えのなさ」「屈辱感」「それでも続けなければという焦り」は、私も同じように経験しました。その経験とそこから少しずつ変わっていったプロセスを、このブログに書き続けています。




